2026.04.01
<導入サービス>
Incident Lake
プロフェッショナルサービス
株式会社アジラは、主に警備業界向けのAIプロダクトを展開するスタートアップ企業です。同社は、ビジネスの急成長に伴い、チーム間でのインシデント対応ナレッジのサイロ化や、多言語環境でのコミュニケーションコストといった運用課題に直面していました。こうした課題を解決するため、同社はSIGQのIncident Lakeとプロフェッショナルサービスを導入。チーム横断でのナレッジ共有基盤の確立と、言語の壁を越えたスムーズなインシデント対応体制を構築しました。

■導入前の課題
複数の事業・プロダクトチームごとにインシデント対応や死活監視のナレッジがサイロ化しがちだった
日本・ベトナム間の言語の壁によるオーバーヘッドが、開発やインシデント対応におけるボトルネックになっていた
ビジネスをさらにスケールさせるため、運用体制と運用品質の強化を目指していた
■導入効果
Incident Lakeをチーム間の共通プラットフォームとして活用し、インシデントに関するナレッジをスムーズに横展開
AIが分析結果やディスカッション内容を多言語で即座に共有、翻訳の労力や言語の壁による齟齬を削減し、コミュニケーションを円滑化
プロフェッショナルサービスによる運用知見の提供により、海外事業を含むさらなるビジネスのスケールへ
株式会社アジラは、日本とベトナムのメンバーが合同で、2015年に創業したAIスタートアップ企業です。ディープラーニングを活用した独自の行動認識AIを強みに、AIを軸とした自社プロダクトの開発および受託開発を手がけています。
同社が展開する事業の一つが、警備業界向けAIプロダクト「AI Security Asilla」です。警備業界では慢性的な人手不足が続いています。そのためカメラ映像をモニタリングして異常を検知する業務は、同社の行動認識AIと非常に親和性の高い領域でした。AI Security Asillaは、設備に設置済みの防犯カメラに、エッジAIサーバーを接続するだけで導入できるため、導入コストの低さや導入のしやすさが高く評価されています。また、カメラ映像のAI解析はエッジ側で完結しており、セキュリティ上の懸念を最小限に抑えつつ、高度な行動認識を実現しているのも特徴です。これらのエッジAIサーバーの運用を担うのが、同社がAWS上に構築したクラウド基盤です。具体的には、死活監視や、ソフトウェアのアップデート、運用ログの収集といった業務を担っています。
しかし、ビジネスが急拡大する一方で、同社ではいくつか運用面の課題が顕在化していました。
第一の課題は、チーム間におけるインシデント対応のサイロ化です。プロダクト開発チームと受託開発チームそれぞれに、独自の運用ノウハウが蓄積される一方で、それらの情報がチーム間で円滑に共有されず、ナレッジの再利用や品質の標準化に課題が生じていました。例えば、受託開発チームはAI運用に強みを持ち、プロダクトチームは死活監視のノウハウに強みを持っていましたが、両者の間の情報共有は十分ではなかったといいます。
第二の課題は、言語の壁によるコミュニケーションコストの増大です。同社では、開発の大部分をベトナム法人が担い、日本法人が企画・設計や運用の一部を担当するという役割分担を取っています。プロダクトと組織が成長していくにつれて、複数言語間のやりとりによるオーバーヘッドが無視できなくなり、業務をスケールする上でのボトルネックになりつつありました。
第三の課題は、運用体制の強化です。警備業界向けプロダクトという性質上、高い信頼性が求められる一方で、エッジAIサーバーの運用には、独自の複雑性が存在します。カメラストリーミングなど、ハードウェアに起因するトラブル。そしてAIの誤作動や異常検知の見逃しといった、AI固有のトラブルにも対応する必要があります。そのため、クラウド側でエッジサーバーを一括管理しているとはいえ、エンジニアの人手に頼る作業も多かったといいます。今後さらにビジネスを拡大していくためには、これらのインシデントを一元管理するとともに、より高度な自動化や、デプロイやリリースの品質向上など、運用体制の変革を目指す必要がありました。
同社CTO 若狭 政啓氏は、当時を振り返りながら「可能な限り自動化を進め、人間が速やかに意思決定できるような運用組織に進化しなければなりません」と、同社の抱えていた課題を総括します。
こうした課題を解決するために、アジラが導入したのが、SIGQのIncident Lakeとプロフェッショナルサービスです。
Incident Lakeは、社内に散らばったインシデント関連の運用データを統合し、インシデント対応を支援するAIエージェントです。同社では、複数の事業・プロダクトライン間でのナレッジの横展開を実現するための共通プラットフォームとして、Incident Lakeを活用しています。
具体的には、エッジAIサーバーの運用ナレッジやアプリケーション層のインシデント情報を、Incident Lakeに集約し、部門を横断して一元的に蓄積・参照できるようにしました。行動認識AIやエッジの運用は同社の技術の中核を担う領域であり、複数のチームにまたがって共通化できる部分が多かったといいます。ナレッジの横展開が可能になったことで、サイロ化の解消に大いに貢献していると、若狭氏は言います。
そして、コミュニケーションコストの削減に大きく貢献しているのが、Incident Lakeの多言語対応機能です。インシデント管理ツールにAIが組み込まれていることで、複数言語でのやり取りでありがちな、微妙なニュアンスの欠落を防ぎ、情報の正確性を保つことができます。その結果、メンバーが翻訳や解釈に時間を割くことなく、ディスカッションや意思決定により集中できるようになったと、若狭氏は評価します。
加えて、若狭氏が特にメリットを感じているのが、Incident Lakeによるナレッジ管理の自動化です。さまざまなツールを横断しながら手作業で起票したり、ナレッジを入力したりすることは、大きな負担となっていました。そこでIncident Lakeを活用することで、Slackなどに流れるフロー情報を、自動的にストック情報として蓄積できるようになりました。このようにナレッジの蓄積が自動化されたことで、ツールに習熟するための時間を掛けず、既存の運用フローを変更せずに導入できる点も、若狭氏が高く評価しているポイントです。
「Incident Lakeは、手動での情報登録を最小限に抑えたUXになっています。そのため、メンバーの新しいツールに対する抵抗感をできるだけ抑えながら、スムーズに運用フローへ組み込むことができました」(若狭氏)
Incident Lakeと並んでアジラが導入したのが、SIGQのプロフェッショナルサービスです。運用体制の強化を目指していた同社にとって、SIGQの専門家による伴走型の支援は、渡りに船でした。
SIGQによる支援は、現状の徹底把握から始まります。同社のケースでは、まずJiraやSlackなど、社内のさまざまなツールに散在しているデータの所在や利用状況を棚卸しして、データを一元管理するための道筋を整えました。さらに、ベトナム・ハノイの開発拠点にも赴き、現地メンバーとのディスカッションを通じて、ドキュメントだけでは見えない課題やコミュニケーション上の問題点を洗い出しました。こうして現状の運用体制における課題を整理し、現場のメンバーとも協働しながら運用組織の変革に取り組んでいます。

また、内製の運用ツールからIncident Lakeへ自動起票するAPIの開発や、各種運用・コミュニケーションツールとIncident Lakeのデータ連携の設計など、組織変革を支えるソリューションの開発にも着手しています。さらに将来的には、Incident Lakeに蓄積された運用ログとAI駆動開発を組み合わせ、インシデントの検知から修正、ビルド・リリースまで一気通貫で自動化する構想も描いています。
若狭氏は、こうしたSIGQによる運用変革の支援に強い信頼を寄せていると語ります。
「正式に支援が始まる前から現場に入ってもらい、様々な改善提案を頂いたことに、『ここまで最初からやってくれるのか』と、正直驚きました。手厚い伴走のおかげで、弊社の運用体制強化に必要なサービスだという確信が持てました」(若狭氏)
若狭氏は、同社の今後の展望について、行動認識は国や地域を問わず活用できる普遍性の高い技術だとして、海外での事業展開も視野に入れて準備を進めていくと語ります。同時に若狭氏は、海外事業のスムーズな展開のためにも、運用力の強化は欠かせないとも語り、Incident Lakeを起点にした運用変革への取り組みを継続していくと表明しました。

「顧客数が増えれば増えるほど、運用品質の水準もより高める必要があります。プロフェッショナルサービスやIncident Lakeから得た知見を吸収し、さらに信頼性の高いサービスを目指します」(若狭氏)
最後に若狭氏は、同様の課題を抱える企業に向けて次のようにメッセージを送ります。
「運用に関する課題は、どの企業にも存在するものです。また運用知見が豊富な人材は限られており、採用の難易度が非常に高いという現実もあります。そうした中で、プロフェッショナルの支援を活用することで、課題解決にかかる時間を短縮し、いち早く運用品質を向上させることができる点は、非常に魅力的だと感じています」(若狭氏)
AI警備という新たな市場を切り拓くアジラ。SIGQは今後もインシデントマネジメントを通して、同社の運用基盤の強化とグローバルへのビジネス展開を支援していきます。
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